産経新聞社

開催日:平成24年7月26日
見学先:産経新聞大阪本社
報告者:大和慎治郎

旧国鉄湊町、現在のJRなんば駅再開発地域にある産経新聞大阪本社を見学して来ました。
夏も真っ盛り。陽炎が立ち上る表通りを歩いてビル内に入ると、雰囲気は一変。天井の高い落ち着いた空間と快適な空気が我々を出迎えてくれました。
爽やかな笑顔が印象的な女性、南さんに案内され、会議室で産経新聞社史のDVDを20分視聴し、そのあと企画室の三宅さん案内の下、新聞社の中枢である編集、制作部を見学しました。訪問する前に想像していたあわただしく騒々しい雰囲気とインクの臭いが全くなく、妙に落ち着いた作業場でした。
我々が驚いたことは、作業の邪魔にさえならなければ写真撮影が許されることでした。「なんと開放的な人達なんだろう」。
そこで新聞が出来上がるまでの様々な過程と、そこに携わる多くの人たちの努力と苦労、そして時間との戦いが日常的に行われていることを知りました。
記事の作成、写真の修正。そのすべてがデジタル化され、担当者がパソコンの画面に集中していました。そんな時三宅さんが案内してくれたのが、出来上がった原稿を鉛筆と蛍光ペンで確認している人たちでした。
「最後は人の目で確認するのですよ」
さりげなくこぼれた言葉の重みに新聞屋のプライドが感じられました。
制作、編集し、幾重にも検査された記事が、郊外の印刷工場にデータで送られ、そこで印刷された後、それぞれの地域にある各販売店に発送されます。朝刊午前2時。夕刊午後2時。“締切りは絶対” 取材から始まり、制作、編集まですべての工程が時間との闘いです。

見学を終えた後に質疑応答があり、販売士協会会員の質問に対して三宅さんは丁寧に答えてくれました。
その中で三宅さんは、若い人の新聞離れを嘆いていました。
新聞は見る(ネットでの閲覧・受動)ものでなく、読む(新聞紙・能動)ものです。
日本人は考えなくなった。考えて行動する人が少なくなった。新聞を見ていて読んでいない。次々と耳の痛い言葉が続きます。
また、なぜ記事を書くのでしょうかとの質問に。
人には何かを伝えたいという思いがある。常に近未来が見える目、良質な情報を提供し続けていくことが我々に課せられた使命だと考えている。今後の日本の進路を意識し、この国の立場や国益を考え時代の視点を読み切ることがメディアとしての重大な役割なのです。
新日本創造宣言とはどういう意味ですか。
我々が若い頃は、物質的には余り満たされていなかったが夢だけはあった。今は逆で、物が満ち溢れ欲しいものが少なくなり、いつの間にか日本人の中に慢心が出てきたように感じられる。真剣勝負をしない、考えない代表になってしまった日本人。日本の伝統、技術の伝承。いいものを伝えようとしなくなった日本人。
新日本創造宣言とは日本人として誇りをもって生きていくことの宣言なのですよ。

22人が耳だけでなく、目を見開き、そして身体だけでなく心まで引き込まれるように三宅さんの話に聞き入っていた。
耳、目+心=聴、そして身体を傾ける。
“傾聴”
久しぶりに人の話に魅せられた。そんな時間でした。

“紙の力、伝える心”
そのロゴマークの大きな目で、いつまでも社会、この国を見続けて欲しい。そして冷静沈着に検討された正確な情報を我々に提供し続けて欲しい。
遥かな夏の青空の中、悠然とそびえ立つ本社ビルにそう心の中で呟き、うだるような暑さも気にならない、なんだか晴れやかな気持ちで行きとは違って見える難波の街の中を歩いて帰りました。