『スポーツが果たす役割とスポーツビジネスの可能性』

平成25年度 第2回販売士塾報告

開催日:平成25年11月22日(金)
テーマ:スポーツが果たす役割とスポーツビジネスの可能性
講 師:大阪成蹊大学マネジメント学部 教授 植 田 真 司 氏
報告者:岩 崎 正 利

 スポーツ(sports)の語源は、ラテン語のdeportareで、仕事から離れる、どこかへ行く、気分転換するという意味がある。18世紀のイギリスでは、山登りや食事をすること、女性を口説くことまで幅広くスポーツとされた。スポーツする人を、日本では「選手」と言うが、欧米では『プレイヤー』と言い、競技スポーツをする人を「アスリート」と、使い分けている。競技がスポーツと思っている人が多いが、スポーツとは、競技をすることではなく、遊ぶこと、楽しむことを意味する。
スポーツが果たす役割として、一つ目は、遊び。欧米では「プレイヤー=スポーツを楽しむ人」、日本では「選手=選ばれた人」と捉えている。スポーツは、遊ぶこと、楽しむことを意味する。スポーツマンとは、スポーツが好きな人といえる。二つ目は、教育面。イギリスでは、上流階級の子どもが通う学校で、「倫理や道徳の規範修得」にフットボールやクリケットなどのチームスポーツを導入した。文武両道(スポーツで教育の3要素「知・体・徳」のバランスを維持する)。運動と学力は比例関係にある。人間は、動くことで脳を活性化させている。
三つ目は、健康面。「運動は、百薬の長」であり、ミルキングアクション※で、血流が良くなる。また、うつ病にも効果があることがアメリカの大学で実証された。
四つ目は、経済面。大阪は、日本のスポーツ産業発祥の地であり、ミズノ、デサント、アシックスなど大阪、神戸で世界のトップレベルのスポーツ用品・用具の研究・開発をしている。スポーツは産業クラスターを形成、日本のスポーツ市場規模は11兆円。スポーツ産業は、ハブ産業であり、スポーツで元気になり、生産性が向上。五つ目は、社会面。スポーツは、世界共通のルールで行われる。人種、世代、地域、国、言葉、習慣などあらゆる壁を乗り越えて、人と人の「架け橋」になる可能性をもっている。平和の象徴である。水野利八氏は「スポーツ産業は、聖業である」と言われた。スポーツは人を幸せにするものであり、健康にする。スポーツマンシップとは、ルールを守るだけではなく、相手を尊重する精神、思いやりのこころである。このようにスポーツは大切な役割を担っている。
スポーツビジネスの可能性についてだが、マラソンブームが起きている。その原因として健康志向の高まり(昼休みのジョギング、ナイトランなど)や参加するチャンスが増え、走ることがスタイリッシュなライフスタイルのようになってきたことや達成感を味わえること。自分の能力開発としてトレーニングすることに意味を見出す人が増えた。また、ファッションやランナーズステーションなどランナーを支援する体制ができてきたことなどがあげられる。五つ目は、国内外で開催されるマラソン大会も多くなってきている。東京マラソンでは応募者が30万を超えており、倍率も10倍を超えている。マラソンに参加しながら一緒に観光も楽しむという人も多くなっている。大阪マラソンも人気となっている。
どの産業分野にもスポーツは関連しており、スポーツ周辺産業を形成している。その意味ではビジネスチャンスは計り知れない。
イノベーションとは、新しい組み合わせから生まれる。ビジネスは、社会生活における問題解決業であり、問題のあるところにビジネスがあるとも言える。大阪は、おもてなしの心を持った街、生活スポーツとして健康的な街、世界の台所として食文化の充実した街として魅力的である。ビジネスチャンスもたくさんある。
以上のような話を伺い、スポーツに対する考え方・イメージを見直す契機となった。また、これから増々柔軟な発想転換やイノベーション力を高める必要性を痛感した。

※ミルキングアクション ジョギングやウオーキングなどの下肢の運動で、下肢の静脈血を筋肉で圧迫して心臓に還流させること。心機能を強化させる。