『従業員満足によるサービス・マーケティング』について

平成26年度 第1回販売士塾報告

開催日:平成26年6月24日(火)

テーマ:『従業員満足によるサービス・マーケティング』について

塾 長:大阪国際大学 グローバルビジネス学科 教授 日野隆生 氏

報告者:岩崎正利

日野隆生塾長から『従業員満足によるサービス・マーケティング』と題して講演をいただいた。講演内容はサービス・マーケティング戦略論の特質など多岐に渡っているが、特に印象的だった内容をまとめてみた。

サービスとは、サーバント(召し使い)がその語源である。一般的に用いられる意味として①奉仕・無償の行為 ②値引き③無料④接客がある。サービス産業としては、①情報通信②運輸、郵便③金融、保険④不動産、物品賃貸⑤学術研究、専門・技術サービス⑥宿泊、飲食サービス⑦生活関連サービス、娯楽⑧教育、学習支援⑨医療、福祉⑩複合サービス⑪他に分類されないサービスがある。

購買行動による分類として(1)最寄りサービス(タクシー、クリーニング、靴磨き、コンビニエンス・ストア)、(2)買回サービス(保険、航空券、旅行代理店)、(3)専門サービス(弁護士、博物館、劇場、大学、情報、医療、スポーツ)に区分けできる。

マーケティング論においては、単に売上増加による利益の獲得というよりは、顧客満足(CS)によるその対価としての報酬が結果としての利益であると考えられている。

マーケティングの中で、インターナルマーケティングというものがある。これは顧客満足により利益と成長をもたらすためには、従業員(サービス提供者)を企業の内部顧客(インターナルカスタマー)として扱い、従業員のニーズや満足(ES)を向上させ、従業員の定着(ER)と生産性の向上を導くものであり、それは「ES」,「ER」、生産性の3要素から生み出される高いサービス価値の提供が顧客満足(CS)に繋がる。高い顧客満足は、顧客ロイヤルティ(得意客)を導くことになる。そして高い顧客ロイヤルティは、売上と収益性の向上に繋がる。現に顧客ロイヤルティの高い企業は収益性が高いという事実がある。顧客ロイヤルティの向上は、顧客維持と口コミによる新規顧客を誘引することになり、この結果プロモーションコストの削減を図ることができる。

利益を発生させる最大の要因は、マーケットシェア(市場占有率)を高めることであるとされていたが、特にサービス業においては、顧客ロイヤルティが利益を生み出すためのより重要な決定要因であることが明らかにされた。顧客ロイヤルティが5%増加すると、利益は25%から85%も増加すると推定されているほどである。

また、従業員ロイヤルティ(忠誠心)を高めることにより、生産性の向上とサービス品質を高め、質の高いサービスを提供することにより、顧客満足、そして顧客ロイヤルティにつながり、長期的な利益の源泉となる。さらに、ロイヤル顧客のクチコミ効果などによって、新規顧客も見込まれる。

従業員が、自分が働いている企業をあたかもわが身同然と考え、企業やその製品、サービスの成功を自分のことのように喜び、更なる成功を呼び込むための労をいとわなくなる。つまり従業員も単なる労働者でなくオーナー意識を持つことにより企業の成功に貢献できる。

以上、塾長の話をお聞きし、サービスを考える場合、ともすると顧客満足(CS)に軸足を置きがちだが、従業員満足(ES)を大切にし、それに配慮した企業がより良質なサービスを提供でき、顧客から愛される企業として発展・成功に繋がるのだということ強く感じました。政府が新成長戦略の一環として、全国50大学にサービス業の専門学部を新設するとの報道がされたばかりの時期でしたので、タイムリーな講演となりました。