白鶴酒造株式会社 資料館

平成28年度 第1回視察見学会報告

開催日:平成28年7月22日(金)

見学先:白鶴酒造株式会社

報告者:平井 淳文

7月22日、梅雨明けの素晴らしい青空の中、視察見学会に参加させて頂きました。見学先は、273年の悠久なる歴史を有する、白鶴酒造株式会社です。

今回は、①白鶴酒造株式会社ダイレクトマーケティング部の畑中伸広氏による講演会、②白鶴酒造資料館の見学会の2部構成でした。

まず、「日本酒市場を取り巻く環境について」と題した講演は、白鶴酒造の概要や様々な取り組みの説明から始まり、日本酒の製造や分類の基礎知識に移り、さらには、マーケテイングから今後の動向に至るまで、幅広い内容でした。

それぞれ話が移るタイミングで、質問の時間もあり、内容が深まる質問が飛び交っていました。

全て興味深い話で、書ききることはできませんので、2つの話題について書かせて頂きます。

一つ目は、灘のお酒造りに必要な「水、米、人」の3つの要素について。

水は、地層をゆっくりと流れ出た自然のミネラルが豊富な六甲の伏流水。世界中の船乗りに愛され、赤道を越えても腐らない水とし重宝されています。

米は、大粒で心白(米粒の中心にある白濁した部分)が大きく、酒造りにおいて雑味の原因となる脂肪・たんぱく質の含有量が少ないものが選ばれます。あの有名な「山田錦」<特に兵庫県産>は、『酒米の王様』とも言われ、大吟醸酒をはじめとする高級酒用の酒米として使用されます。普段の食生活で食べている白米は、精米歩合が90~92%であるのに対して、高級日本酒の場合は、精米歩合が35~40%まで磨きあげられます。

また、白鶴では、「山田錦に優るとも劣らない酒米を生み出す」を目標に酒米育種の研究に着手し、『山田錦』の母方の品種『幻の米 山田穂』を復活させ商品化されました。更には、その「山田穂」と『山田錦』の父方の品種「渡船」を交配させ、約8年の歳月をかけて、2003年に山田錦の兄弟米「白鶴錦」を誕生させ、2007年には、「超特撰 白鶴 純米大吟醸 白鶴錦」の発売に成功されています。

人は、機械化が進む今でも製造工程において、人の手が重要であるとの説明がありました。

高額なお酒の製造工程については、そのほとんどが手造りであることに感銘しました。

3つの恵まれた要素により、あの澄み切った日本酒が出来上がっており、灘が日本国内清酒生産量の3割を占有する大きな拠点になっていることに納得ができました。

二つ目は、日本酒の国内外の市況について。

まず、国内市況では、人口減、高齢化、健康志向、若年層のアルコール離れ、飲酒運転取り締まり強化等より下降気味。対して海外市況では、クールジャパン、和食ブームにより、海外出荷6年連続過去最高となるなど、上昇しています。国内と海外を比較すると、対照的な結果となっていました。今後さらに海外への日本酒文化が広がっていくと、講演会の中のトピックにあった、お寿司の話ではありませんが、カリフォルニアロールのような、海外で独自の進化を遂げた日本酒の逆輸入が起こるのではないかと、ふと思いました。

資料館では、講演会で聴いた内容を、当時の貴重な資料を見ながら解説頂き、より立体的に理解を深めることができました。お酒の種類により、半分以下にまで精米されるお米。草履一つについても、上から順に並んでいる上下関係の厳しい職人の世界。動物の名前がついた大小様々な道具。など興味深く見学致しました。また、最後に試飲もあり、舌で味の違いを確かめることもできました。

資料館には、海外の方も多く来館されるとのことでしたが、確かに、見学会の時間中も海外の方の姿がありました。

守るところはしっかり守り、変えるところは企業努力としてしっかり変えていく。グローバル社会という変化の中を、灘の中で飛躍した歴史ある白鶴が飛び立つ姿が見えた視察会となりました。

講話 白鶴酒造株式会社 ダイレクトマーケティング部部長 畑中 伸広 氏