「国際都市としての大阪」 ~ホテル業界から見える、そのポテンシャル~


開催日:平成29年11月16日(木)
講 師:株式会社ホテル日航大阪 総支配人代理  星野美奈子氏
報告者:鴻本久美

 街のイチョウがすっかり色づいた11月16日、今年度の第2回講演会が開催されました。今回の講師は、大阪のメインストリート御堂筋に立地する、ホテル日航大阪の総支配人代理を務めていらっしゃる星野美奈子氏です。「国際都市としての大阪」~ホテル業界から見える、そのポテンシャル~と題して、“大阪のいま”に焦点をあて、お話をいただきました。

 星野氏は、1980年代後半、日経平均株価が上昇の一途をたどる時期を金融業界で活躍され、その後ホテル業界に転職。円高などを背景に90年代から始まった日本人出国者(アウトバウンド)急増の時代から、訪日外国人客(インバウンド)市場が成長する現在、第一線を走り続けていらっしゃいます。


<講演要旨>
-インバウンドの現状-
 観光庁が示した2017年の訪日客数は、2,800万人に届くとの見通し。国別のデータによると、1位中国、2位韓国、3位台湾。さらに、その伸び率としても、1位は中国で、さらにフィリピンなども高い伸び率を示す。新興国経済では、GDPの上昇と出国率は相関関係にあり、インバウンド増加の背景のひとつとなっている。また、2013年以降の円安や、今年発表された中国人へのビザ発給要件の変更など、いくつかの規制緩和も大きな要因。
-大阪のインバウンドの現状-
 関西空港国際線の利用増加が挙げられる。アジア各国からの入国者には断然トップで関西空港が利用されており、なかでも、LCCの利用率の伸びは顕著で、FSC(フルサービスキャリア)のそれを大きく上回る。さらに、消費額の推移についても、中国における関税引き上げの影響を一時は受けたものの、2016年の関西のインバウンド消費額は8,700億円で、増加の傾向にある。


 ホテル日航大阪にとって、もうひとつ見逃せない現状としては、民泊の台頭とのこと。件数では東京が最も多く、ついで大阪、京都となっているが、密集度合いでは、大阪ミナミの地区が東京太田区をはるかに上回っている。さらに、楽天、KDDI、JTBといった国内企業も民泊への参入を加速している。


-現状をふまえ国際都市・大阪の「都市力」について-
 現在、外国人訪問客数の増加率トップは大阪。2位の中国・成都に4ポイントの差をつけており、渡航者数としては世界の観光都市には及ばないものの、ポテンシャルの高さが伺える。また、世界の都市総合力ランキング(GPCI:森記念財団発表)によると、大阪はボストンについで26位。この指標は、経済、研究・開発、交通・アクセスなど6分野で総合力評価され、世界の主要44都市をランキングしたもの。中でもホテル業界として注目するのは「文化・交流」の分野。今後、世界的なイベントや会議の開催、大阪の食文化など、地域の魅力の発信、集客施設の整備、そして受け入れ体制としてハイクラスホテルの充実など、その評点を上げ、より質の高い都市になって行くことに期待が高まる。この先、大阪・関西の成長機会としては、2019年のラグビーワールドカップや2021年のワールドマスターズゲーム、また2025年の万博誘致など目白押しで、発信力の強化と来阪者への快適性・利便性の向上が求められる。

<まとめ>
 今年、開業35周年を迎えられたホテル日航大阪。街の未来を見据え、ハード・ソフトの両面で様々な取り組みが行われているそうです。御堂筋・イチョウをモチーフとした客室やレストランの大改装、また、外国人スタッフを増員し、お客様のホテルライフの充実などに努めていらっしゃいます。行動理念である、「いつもの安心、進化する快適」を追求する姿勢は、日々、従業員全員が携行するオリジン8としてまとめられているとのこと。さらに、このほど発表されたオークラニッコウホテルズ(グループ72店舗)内の表彰において、なんと、笑顔・清潔感などが評価されるCS(顧客満足度)部門のグランプリを獲得されました。長年にわたりホテル業界に携わっておられる星野氏のお話しは、外国人を受け入れ、そして文化を発信するという、まさに胎動を続ける大阪のいまを鮮明に伝えてくださいました。