進化するオリンピックのスポーツ用品

塾 長 大阪成蹊大学マネジメント学部教授 植田真司氏
報告者 岩崎正利

 今回の販売士塾は、元スポーツメーカーで用具開発を担当し、現在は大阪成蹊大学でスポーツ用具等の講義をしている植田真司塾長をお迎えし、これまでのスポーツ用品がどのように進化してきたのかなどについて、その変遷をわかりやすくお話ししていただきました。

 関西はスポーツ用品産業発祥の地であるとの解説から始まりました。なぜ関西がスポーツ用品産業に適しているのか、その理由として①神戸ではゴム、ケミカルによるシューズが盛んであること②大阪では河内木綿をはじめとする繊維が盛んであること③奈良、和歌山では革製品が有名で、奈良では野球グラブやスキーのシューズが盛んであることを挙げられました。大阪を中心に関西スポーツ産業クラスター(集団)が形成されており、その点から関西はスポーツ産業のメッカである。現にスポーツメーカー・卸の上場企業7社の内、実に4社(アシックス、ミズノ、デサント、ダンロップスポーツ)が大阪、神戸に本拠地を置き、世界のトップレベルのスポーツ用品・用具の研究、開発を行っている。ちなみに世界の3大スポーツ用品開発地は、ナイキのアメリカ、アディダス・プーマのドイツ、ミズノ・アシックス・デサントの日本と言われており、まさに大阪は世界に通じるスポーツ都市ともいえるのではないかとのことでした。大阪はスポーツが大変盛んな所でもあり、その理由の一端が分かりました。

 スポーツ用品・用具の役割として、パーフォーマンスの向上が挙げられる。物理的効果としては、軽い、抵抗が少ない。心理的効果として軽く感じる、早く泳げると思うことなど。また安定性の向上も図られており、年々記録も伸びてきているようです。例えば、シューズの機能について言えば、まず足に合っているかどうかフィット性が最優先され、衝撃吸収性(クッション性)ランニング中の着地時の衝撃を緩和する性能、反発弾性、路面把握性(グリップ性)摩擦性ともいわれシューズの滑りにくさを意味している、通気性、耐久性、軽量性などがあるようです。用具でいえば、プロ野球用木製バットの材料は従来アオダモがバット材として使用されてきたが、直径40センチ前後の太さに育つまでに60年から80年かかり、1本の木から取れるプロ野球用のバット材は6本ほど。選手が年間に100本~120本使うことを考えると、多くの木が必要だったが、メープル材はアオダモの2~3倍(12本~18本)取れるため、現在では北海道産のアオダモ、北米のメープル、ホワイトアッシュがメインだそうです。用具の素材も天然素材から人工素材へと進化してきており、その意味ではスポーツ用具の進化は素材の進化でもあるようです。また、レスリングや陸上競技、水泳をはじめとしてウェアやユニホームもデザインや素材が変わってきているとのことでした。今後もますます(スポーツ用品・用具の)開発が進めば、新記録の誕生も十分期待できそうです。2020年には東京オリンピックが開催されますが、果たしてそれまでにどのような用品や用具が開発されるのか、記録との関わりはどうなっていくのかなど、ワクワク感を持って観戦を楽しみたい気分にしていただきました。