“販売士”はAIに代替されるのか?

開催日:令和元年5月24日(金)
講 師:株式会社よしだまこと事務所 代表取締役 ITコーディネータ 吉田 誠 氏
報告者:高 濱 光 暢

「今ある仕事の半数以上が今後AIに奪われる!」
 英オックスフォード大学でAI(人工知能)などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授(その他)が著した『雇用の未来―コンピューター化によって仕事は失われるか』という論文で、702の職種について、コンピューターにとって代わられる確率を仔細に試算した結果が公表されている。現在、当たり前に存在する仕事の多くが、コンピューターにとって代わられなくなってしまうのではないか?というので世界的な議論を巻き起こしている。
 またAIがすでにチェスや囲碁の王者を破ったというニュースもあり、AIのことを目にしない日がないくらい、その進歩はすさまじく、今後の我々の社会にどれほどの影響を及ぼすのか?今大変関心の高いテーマである。

 今回、講師の吉田氏もこのようなニュースを日々、目にするに及んで、では「販売士もAIにとって代わられるのか?」とふと思いいたったそうです。


『日経ビジネス「戦慄の人工知能 AIが企業を動かす日」』
・自動化の可能性が高い主な職業とその確率
    :
 小売店の店員        92%
    :
出所:英オックスフォード大学カール・フレイ氏らの2013年の論文より

との紹介があり、販売士もAIにとって代わられるのか?と戦慄を覚えました。
また最近話題といえば、無人店舗が広がっていくか?という点からAmazonGoの紹介や中国で進む無人店舗の広がりについての解説がありました。ここまで進むと本当に販売員はAIにとって代わられるといいますか、小売店の店員はもはや不要ではないか?とも思えてきます。

AIにとって代わられない販売員の事例として、講義の冒頭で洋服店員の事例を紹介してくださいました。
その店員さんは、お客様一人一人の好みや何を買ったかなどを把握し、そのお客様にあったOnly oneの接客サービスをすることで、たくさんのリピーターを獲得しているという内容でした。この話を聞くにつけ、AIが進んでもいきなりすべてが取って代わられるのではなく、人が行うことでまだまだAIに負けない付加価値を提供できるものはあるのだと、今後の販売士としてのあり方も提示くださいました。
販売士3級テキスト(旧)にも、販売士の役割として「商品選択のための情報提供」「満足感の提供」「心地よい売場環境の提供」「顧客のニーズを把握して商品構成に反映させる」「顧客の苦情に適切に対応して時点のファンにする」と列挙されており、AIにはできない販売士としての役割が示されております。AIの進展を憂いるよりも販売士としてスキルアップに力をいれるべきではないでしょうか。
その他、とくに日本特有の事情として、少子高齢化が進むことにより労働人口が減少し、労働力不足が問題となってきているところ、AIにとって代わられるというよりむしろ人手が不足するところを補うため、あるいは助けるために普及するのではないか、ということが言われます。
すでにコンビニ各社やスーパーなどでも無人レジの導入や無人店舗の実験も始まっており、今後ますますの人手不足が進むと思われるところ、日本ではAIにより仕事が奪われるというより、AIによって代替してもらわないといろいろな業務に支障をきたすことになる、今の仕事の現場を支えられないのではないか?だからむしろAIが進んでいくことが望まれるのではないかと考えられます。


吉田氏の方から今後の見通しとしては、おそらく単純なマニュアル化された接客を進めてきた業界や店舗の店員は、コストという面からもAIにとって代わられたり無人店舗に進む可能性が高いが、付加価値を提供できるサービス充実店ではむしろ人のもつスキルがますます求められるのではないか、との見解をお示しいただきました。
だから“販売士”としてはまさにプロとして知識や技術を高め、お客様とのコミュニケーションによりそのニーズを適切に把握し商品そのものよりソリューションを提供することが大事になってくる。そしてAIと敵対するのではなく、むしろAIを使いこなしてサービスの向上を図ることが大事なのではないか?それが今後の販売士に求められるものではないか?との見解をお示しくださいました。AIへの不安ではなく希望を提示していただけたことはたいへん励みになりました。
今回の講演を機に、我々大阪販売士協会としてもますますの研修の充実を図り会員のレベルアップに繋がる方策を考えていきたいと思いました。
AIに関する情報が錯綜するなか、講師の吉田氏は大変わかりやすくまとめて大事なことをお伝えいただき、本当にありがとうございました。