カップヌードルミュージアム大阪池田

開催日:令和2年2月19日(水)

報告者:古田 周平

 今回「カップヌードルミュージアム大阪池田」見学会に参加いたしました。

 私にとってカップラーメンといえば、大学生の頃に歩行者天国で立食したことや浅間山荘事件の際に機動隊の面々が雪中でカップラーメンを食していたことが第一印象として残っています。

今や即席麺は全世界で製造販売され広く摂取される食品となりました。

 今回、同施設での製造体験やパネル記事等の見学を通して安藤百福氏の経営者としての特異性を学ぶ機会を得ました。具体的に私が感じ取った事項をあげます。

・時代の風を読み解く力

 即席麺は、これから迎える高度経済成長時代に向けて簡単調理で保存性に優れた食品であり、元来麺好きの日本人で衛生的な食品であるという面でも時代に即応していました。

・既成概念にとらわれない思考

 商品そのものの独自性のみならず、問屋を通さずに直接小売店に試供品販売して売れた分のみを現金回収するという斬新な流通機構システムを生み出しました。

・強い集中力と執念

 一つの事象に関心を持つと寝食を忘れて没頭できるところは大きな才能です。

・ピンチをチャンスに切り替える能力

 幾度もの事業失敗を千載一遇のチャンスと切り替えられる強靭な精神力の持ち主であり、これが数多くのビジネス成果を上げる原動力になりました。

・即断・即決・即行

 難問に直面した時に過重に熟考するよりも素早い対応で危機を乗り越えました。タイムイズマネーの思考はベンチャー企業にとっての必須条件だと思います。

・確固たる経営理念

 「食足世平」が安藤百福の基本理念であります。

食が足りてこそ世界は平穏になるとの食に対する強い信念です。

 衣食住の中でも食が最も重要であり、食育は知育、体育、徳育に勝るものであるという考え方です。

 今回、同施設で私が最も強い印象を持ったのは「研究小屋」のモニュメントであります。安藤百福はここを拠点として強い執念で即席麺を発明しました。

 今日すべての巨大な企業の創業オーナー経営者に共通するのは、起ち上げるべき事業と商品開発に対する度外れた熱い精神構造であります。やはり企業の大小にかかわらず重要なのはベンチャースピリッツであると痛感しました。

安藤百福が即席麺を開発・販売したのは人生の後半でありましたが、そこに至るまで数々の事業の失敗がありました。

しかしながら事業失敗の履歴こそが、その後の事業開発の礎になったようです。

 優秀な経営者は発想が柔軟です。多くの経営者は経験値が多いことが逆に企画や発想の妨げになることがあります。対して安藤百福の場合は、多くの失敗の経験こそが、既存のルールや慣習に捉われない自由な発想をもたらし斬新な商品や流通システムを生み出す原因になったものと思います。

未来に目を移すとき、安藤百福の経営手法がそのまま今後も通用するとは思いません。

 50年以上前とは時代背景が大きく異なります。偉大な経営者の再現を待つということではなく、彼の有形無形の業績成果を将来にどのように活かせるかということが今後重要なテーマになるのではないでしょうか。

 少子高齢化が進行し多くの市場がシュリンクする一方で著しく発達したデジタル社会になっている今日の日本経済において、いかなる事業が今後成長を予測させるのか考える時、即席麺やその周辺事業がますますこれからの時代に即応する商品であると考えます。また近年、食品市場おいては食の安全や健康志向が大きくなってきている時代にあって、インスタント食品市場においても発酵食品等の開発にかかわることが一層の成長に繋がるものと期待しています。