ススキ(芒・薄・茅・萱)
花ライフコーディネーター 宮川 直子
会報誌「大阪販売士」第81号掲載(2000.8.31発刊)
<原産/日本・朝鮮半島・中国、イネ科ススキ属、生育地/日本全土、英名 ユーラリア(Eulalia)>
“幽霊の正体みたり枯れ尾花”
よく耳にするこの川柳の「尾花」とはススキのこと。花穂が動物の尾に似ていることろから来ている。
万葉集で、山上憶良が選んだ「秋の七草」(萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花)の中のひとつ。万葉集には「ススキ・オバナ・カヤ」の3種類の名で詠まれた歌が46首(45首との説も)ある。
「ススキ」とはスクスク育つ木の意。日本全土の山野に生育し、大変強靭で成長も早く、花言葉も「勢力」「活力」となっている。
風に乗って飛んできた種は大都会のほんのわずかな土でも見つけて住み着く。我が家(大阪市内)のベランダの鉢植えの中に花穂を見つけた時は驚いた。前に植えていた植物はどうやら追い出されたようだ。
又、「カヤ」とは『刈り取って屋根をふく→刈屋根』『萱葺き屋根』の言葉のとおり。
このように、古くから身近な植物として利用されてきたが、江戸時代から受け継がれてきた素朴な玩具、ふっくりとした「ススキミミズク」なるものもある。これは、ススキの穂でつくられたもの。東京都豊島区雑司が谷、鬼子母神境内にある都内最古の駄菓子屋、川口屋の店頭に今もならんでいる。かつてこのあたりに生えていたススキで子供を楽しませたものなのだろう。
また、もうすぐやってくる秋の全国的なイベント「お月見」には、なくてはならないもの。中国の風習(里芋の収穫祭説がある)が日本に伝わったらしいとのことだが、日本各地それぞれの地域で、いろいろにアレンジされている。中秋の名月と一升瓶に挿したすすき、月見団子(中国で月餅)や里芋、さつまいも、なすび、きゅうりなどで作った動物の飾りものなど、思い浮かべただけで、子供達の笑顔が浮かんでくる。ちなみに、供える月見団子の数は12個、うるう年は13個だそうだ。
さらに、日本独自だが、もうひとつのお月見がある。「十五夜」の一ヶ月後の「十三夜」、すなわち旧8月15日と旧9月13日。片月見は良くないなどいわれるが、難しいことは抜きにして、楽しいことは多い方がよい。その時々の収穫を感謝して、お供えものがかわる。前を「芋名月」、後を「栗名月」「豆名月」「小麦の名月」などとも呼ばれる。この二つのお月見の期中、ススキの見ごろは続き、満月の光の中、縁側に映える。
一見地味にみえるススキも、奈良県東端に位置する曽爾(ソニ)高原のその頃は、なだらかな亀山の斜面一帯、見渡す限り銀世界で壮観。夕陽・朝日に映え、刻々と色合いを変えつつ風になびく姿には、誰しも立ちつくす。同じように葛城山頂でも楽しめる。
ススキの種類としては、葉の模様により「タカノハススキ(鷹ノ羽ススキ)」又は、「ヤマネススキ(矢羽ススキ)」(横縞)、「シマススキ」(縦縞)、模様は無いが細葉の「イトススキ」などがある。又、河原や水辺等、湿地に生えるススキに似たものは「オギ(萩)」といい、別のもの。
ところで、9~10月頃、ススキに寄り添う「思い草」を探してみよう。足元をそっとかき分け、20㎝前後、うつむき加減に咲く淡紫紅色のパイプ型の花、別名「ナンバンギセル」がそれ。ススキに思いを寄せる花としてご紹介したい。
(ナンバンギセルについては、会報誌「大阪販売士」第116号掲載(2009.10.1発刊)にて掲載)
<追記 2024.10.6>
・2024年の「十三夜」は、10月15日(火)です。
・ススキのドライフラワー:切り花を購入し、穂が好みのふくらみ具合になったときに花瓶の水を捨て、そのまま楽しみます。
(満開まで水につけていると「種 タネ」が出来て飛び散ってしまいます)