カエデ(楓)

花ライフコーディネーター 宮川 直子

会報誌「大阪販売士」第86号掲載(2001.11.30発刊)

今年も例年にもれず『紅葉狩り』の相談が始まった!桜のお花見と並ぶ二大イベントのひとつ。どちらも”早く行かないと散ってしまう”と、せかされる。新緑のころのもみじと秋のみごとな紅葉と、どちらがいいか・・。

昔から議論されてきたと聞くが、人々の騒ぎ具合からして、後者の方が少し優勢のように思える。非常に身近な樹木である。

童謡「もみじ」は、ただひたすら大声で歌ったが,今になって思うに,もっと丁寧に味わってうたうべき歌だ・・と。厳しい冬の前の、山からの最後の贈り物なのだ。『 秋の夕日に照る山もみじ-----松を彩るかえでや蔦は----- 谷の流れに----赤や黄色の色さまざまに----- 』“かえでや蔦“ も “もみじ”なの? “もみじ”って「紅の葉」と書くのに黄色もあるの? “もみじ”と“かえで”とどう違うの? などなど、不思議だった。

ずっと後で知ったが『もみじ』とは秋に色づく木々の葉すべてをいう。「ハゼ」「ナナカマド」なども紅葉・黄葉すればすべて『もみじ』と呼べるわけだ! 万葉集・古今集などでも「紅葉・黄葉」とどちらも使われている。又その形から「かえるて・かえるで」、「蛙手・鶏冠木」,それが「カエデ」に。さらに鎌倉時代頃からは特に美しく色づく「カエデ」を「もみじ」と呼ぶようになった。最近は「楓」と書くが,本来「楓(フウ)」とは別のもので、この字を当てはめるのは相応しくない。葉型等少し似てはいるが,前者はカエデ科,後者はマンサク科。葉の付き方や種子が異なる。カエデの種は羽が付き(翼果)プロペラのようにクルクル回転しながら落ちてくる。その様は丁度竹とんぼのようで面白い。又、幼子のかわいい手を「もみじのような」と表現するが(掌状葉)、葉の指の数は5本とは限らない。3、5、7、9・・と一般的には奇数。「ヒトツバカエデ」など切れ込みのないものもある。そういえば広島の”もみじ饅頭”は確か7本だったと思うが、その数が一番多いのかもしれない。

 約200種、ほとんどが北半球の温帯に分布し約6000万年も前の化石にもみられる。庭木、盆栽、公園樹、家具、建築材に使われるほか

ピアノやバイオリンの一部に姿をかえるもの、更にお箸や爪楊枝など日々の暮らしの中にも。又「目薬の木」は洗眼薬に。驚きは、樹液に1~5%もの蔗糖(メイプルシロップ)が含まれていること。その筆頭は北米産「サトウカエデsugar maple」,カナダの国花、国旗として有名だ。英・米名は「Mapleメイプル」である。

他に欧州や日本でも砂糖採取が行われている

が、わが国ではイタヤカエデなどを使う。農家の副業として北海道や静岡で生産。

街路樹に適すのは樹勢の強い「唐カエデ」が多く、青葉のころは緑のトンネル、今頃は落ち葉を楽しむ。明るくキレイな赤、あるいは渋いまだら模様など、つい拾ってしまうが、すぐに色がさめてしまいとても残念。

今年は万葉気分で、奈良の奥山へでも足をのばしてみようと思っている。

カエデ

トウカエデ

カエデの花

カエデの種