サルトリイバラ (猿捕茨)
花ライフコーディネーター 宮川 直子
会報誌「大阪販売士」第90号掲載(2002.10.31発刊)
【 サルトリイバラ (猿捕茨) 】
カレンダーの残りもあとわずか、急に慌しくなった花卉かき業界。すでに10月頃から年末・年始のイベント用の飾りや器など、オシャレで手ごろな物の争奪戦はスタートしている。
最近、町内あげてクリスマスの装飾に力を入れている地域が出てきた。突如として電飾やツリー、リース飾り等のミニ名所があちこちに出現。わざわざ車で見物に出かける人もあり、ちょっとした賑わい。新しいコミュニケーションの場ができている。そんな手作りの飾りに活躍するのが「サンキライ」の赤い実。
正式名は「サルトリイバラ(猿捕茨)」である。 サルトリイバラ科の落葉つる性半低木で日本全土の山野・林・藪の緑の中に自生。ジグザグに折れ曲がった茎には所々固いトゲがあり、毎年、何度かは痛い目にあう。しかしそのトゲは、名にあるように猿を捕獲するほど鋭くも多くもない。ほんものの「猿捕茨」はマメ科の「ジャケツイバラ」だといわれている。こちらの方は、蔓状にのびた枝には、鋭いトゲが多くついており、狩猟の際、猟犬がたいそう怪我をしたとか。
8~9月頃の「サンキライ」は、緑色の葉と同色の実付きの状態で出荷され、特徴ある茎を生かして挿す。秋に赤熟したものは、彩りの少ない冬の街の装飾に重宝している。近年は中国から大量に入荷しているが、国産物の方が赤い色が数段美しく立派。直径7~8㍉で10数個が球状にかたまって付く。
おいしそうだが食用にはならない。ところが春~夏にかけての新芽はてんぷらやゴマ和えに、若葉はお茶にして楽しむ。又、成長した葉は厚くて光沢があり、お餅を包むのに使われている。多くの人々の故郷の味「かしわ餅」がそれだ。特に西日本では柏の葉を使う地域よりも、この葉を利用する地域の方が多いそうだ。古代から食物を「柏」「ホウノキ」「ユズリハ」「サルトリイバラ」等、木の葉の器に盛っていた。それらの木の葉すべてを「かしわ」と呼んでいたらしい。だから「サルトリイバラ」の葉で包んだものを「かしわ餅」と呼んでもいっこうにかまわないわけだ。さらに根茎は漢方薬として慢性皮膚病・消炎・利尿等に効くといわれている。
古くから我々の身近に居るすごい実力の持ち主なのだ。クリスマス・リースのかげに隠れたこの利用価値を再認識、試してみるのもいいだろう。 (2024.11.7 一部修正)
<追記2024.11.8>
いつの頃からか、町内あげてのクリスマス装飾は見かけなくなったが、その内 また復活するのだろうか・・・