ツワブキ (石蕗)

花ライフコーディネーター 宮川 直子

会報誌「大阪販売士」第102号掲載(2005.10.1発刊)

大阪西区の靱公園、薔薇の季節が終わりかける晩秋、『後はおまかせ!』とばかり、しっかりと主張している「黄色い花」と「艶のある葉」。これが「ツワブキ」である。 50~70㎝の花茎の先に直径5㎝位の菊に似た「濃い黄色い花」を複数つけ12月頃まで咲き続ける。葉はフキの形に似て大きめの円形で艶があり肉厚。名の由来は「葉に艶のあるフキ」「艶ブキ」から、又「フキ」の語源については定かでないが「冬黄」『冬に黄色く咲く』からきているという説がある。

「フキ」の花の蕾が「フキノトウ」だが「ツワブキ」にはそのフキノトウは無い。キク科の中では「フキノトウ(別名:春告花)」でその季節が始まり、「ツワブキ」で終わる。冬に向かい彩りが少なくなってゆく中、キッパリとしていてとても美しい。「フキノトウ」が愛らしい少女ならば「ツワブキ」は寡黙な武士のように感じられる。

「ツワブキ」は「石蕗」と書き、暖地の海岸近くの崖や林の中で自生する常緑多年草。文字通り「イシブキ」とも、「ヤマブキ」とも呼ばれている。この花は「フキノトウ」と異なり、あまり関心も持たれず知らない人も多い。強健で用土や日あたりもさほど選ばない為、公園や日本庭園に植えられることも多い。欧米ではロックガーデンなどにも重宝されているそうだ。

 秋は旅のシーズン、楽しみの一つは土産物屋をのぞくこと。親しい人への他、自分の為の一品も探す。旅から帰って後もその一品がなくなるまで旅の余韻が続く。その中でよくあるのは佃煮の「キャラブキ」。「野蕗」や「蕗」で作ることが多いようだが、本来の「キャラブキ」は「石蕗」で作るそうだ。古くから山菜として利用され、5月頃の「若葉の柄」は蕗のものよりも細いが香りが強くておいしいらしく、佃煮やあえものに。又「若葉」はてんぷらにする。最近は「里山」や「クラインガルテン」等、自然とともに暮らそうとする方達の話題も増えた。是非「本物のキャラブキ」を味わってみて欲しい。又やけど,おでき,くじき等には生葉を軽くあぶり、揉んでつけるとよいそうだし、夏に葉や茎を採取し、天日で乾燥、保存、煎じて飲むと下痢や食中毒にも効くとのこと。

あまり日あたりのよくない庭先でも育つので、「観て良し、食べて良し、さらに痛みにも」となれば、挑戦の価値有り!