サザンカ(山茶花・茶梅)

花ライフコーディネーター 宮川 直子

会報誌「大阪販売士」第82号掲載(2000.11.15発刊) 

『さざんか さざんか 咲いた道 たき火だ たき火だ 落ち葉たき「あたろうか」「あたろうよ」しもやけ おててが もうかゆい』

これは懐かしい動揺「たきび」の二番の歌詞。一番のはじめは『垣根の 垣根の 曲がり角―』この垣根は、きっと、サザンカだ…と思う。

この花の名を聞くと、この歌とそれを歌った幼い頃の風景が浮かんでくる。最近は「サザンカの垣根」もめっきり少なくなり、この歌も、「たきび」も「しもやけ」も、今のこども達は知らないのかもしれない。しかたがないけれど、ちょっとさみしい気がする。

この歌のせいかサザンカの軽やかさと幼子は良く似合う。同じ仲間のツバキは、重厚で大人に似合うように思える。

コスモスや萩など秋の花が次々と終わり、晩秋から初冬にかけて、色味の少なくなった風景に、サザンカが、優しく、しかもさりげなく色を置いてくれる。花言葉も「ひたむきさ(白)」「謙譲(桃、紅色)」など。花暦では11月の花。少し遅れて咲き出すツバキ(椿)は、文字どおり春花木に名を連ねる。

同じ、ツバキ科ツバキ属には、ほかに「チャ(茶)」がある。まるでサザンカの姉がツバキ、弟がチャのように関連深い。サザンカは一般には「山の茶の花」→「山茶花」ときには「茶山花」と書くが、中国では「山茶花」はツバキのことである。

サザンカは、ツバキと比べ、枝・花・葉すべてにわたり、小ぶりで華奢。故に「姫椿」の別名がある。ツバキのような、華やかさはないが、可憐な花は清楚で、野趣にとんだ美しさが、大変好ましい。おしつけがましくなく控えめな姿を、女性に重ねる気持ちもうなずける。大きく異なるのは、花の散り方である。ツバキは花ごとポタリと落ちるので、縁起が悪いとされるが、山茶花は花びらが一枚いちまい、ヒラリヒラリと散り、木のもと一面につもる。

野生種のサザンカはやや細めの白い5枚の花びら、一重咲き。園芸種は、淡紅、紅、ぼかし等もあり、一重・半八重・八重咲きとさまざまである。江戸初期から園芸品種が作出され、現存は約300種。

佐賀県東背振村の千石山は、サザンカの自生北限地帯ともいわれ、国の天然記念物になっている。3ヘクタール2,208本の開花期は、一面雪が降り積もったような独特の風情だそうだ。また、大分県の「日出の大サザンカ」は県の天然記念物。

ちなみに大阪市内では、西淀川区(昭和50年)・住之江区(昭和52年)が、それぞれ区の花としている。ひょっとして「山茶花の垣根」が増えるかもしれない…と同時に、心の豊かさの増えることも期待して。

※動揺「たきび」について

○作詞者=巽 聖歌(たつみ せいか)

○作曲者=渡辺 茂

○昭和16年12月発行の「NHK子供テキスト」に発表。

同12月9・10日「幼児の時間」に放送。

(2024.11.23 一部修正)