【ヤドリギ ( 寄生木・宿り木 )】

花ライフコーディネーター 宮川 直子

  「あしひきの 山の木末の 寄生取りて
       插頭しつらくは 千年壽くとそ」(万葉集)

 大伴家持が正月二日に一同の長寿を願い詠んだ祝歌。「寄生」とは「ヤドリギ」のこと。葉のすっかり落ちた木々の枝で真冬でも青々と生き抜く生命力の強さに憧れ、あやかりたいと願ったのであろう。それを頭に飾ったのもうなずける。
 縁起木として飾るに相応しいが、栽培されているわけではなく入手し難い。

 欧州では、希望・平和・命のシンボル、幸せをもたらす等の意味から大変好まれている。アールヌーボー(1890~)のモチーフとして「ヤドリギ」は かなり使われたようだ。
 薬効もあり古来より洋の東西を問わず利用。「枝葉」は鎮痛・利尿・血圧降下に、「実」は 果実酒や、効果の程は分からないがトリモチの代用にすることもあるとか。

 桜の頃の吉野山、中千本あたりで桜花とともに春空に浮かぶ「宿り木」を見つけた。
 その数ヶ月前の晩秋、たまたま市場に出た「実付きの宿り木」を手にしたが、それは淡黄色で半透明、直径6ミリ位の美しく上品な実だった。

 この木は名のとおり、ケヤキ・エノキ・クリ・ブナ・サクラなどの落葉高木の幹に半寄生。宿主が葉を落としても常緑の宿り木はすぐに見つけることができる。40~50cm位、数十年経たものは1mを超える「大きなマリモ」「緑の毛糸玉」のようなこんもりとした球形に。2~3月ごろ黄色の小さい花を咲かせ11~12月に結実、そして冬は枝先に残って野鳥達の餌になる。

 特に群をなして日本に渡ってくる「レンジャク」が好む。ほとんど地上に降りず樹上で生活をする鳥で、宿り木とは よきパートナー。非常に粘着性の強い実は、野鳥の助けを借りて枝から枝へと宿主を渡りあるく。
「ヤドリギ」の別名は「飛び蔦」「ほよ」「ほや」で、「レンジャク」の別名は「ほよ鳥」「ほや鳥」である。

 2月頃、奈良公園や枚方市の山田池公園付近で「ヤドリギ」を探せば、「レンジャク」に出会えるかもしれない。

※会報誌「大阪販売士」第103号(2006.1.1発刊)より転載
2025/1/1:Web掲載にあたり一部改変