ウメ(梅)
会報誌「大阪販売士」第79号(2000.1.1発刊)より転載
2025/1/26:Web掲載にあたり一部改変
花ライフコーディネーター 宮川 直子
「高津の宮の昔より…」で始まるのは大阪市歌。三番の歌詞に「東洋一の商工地 咲くやこの花さきがけて よもに香りを送るべき…」の『この花』は「梅」の花であり、『…昔より…』の言葉に、おおいにうなずける。
「梅」は中国では「君子の花」「花中の王」と言われ、万葉時代に九州大宰府を経て、奈良の都にもたらされたという。当時の知識人たちは文化の進んだ中国へ留学し、かの地の人々の暮らしを取り入れた。舶来を好む風潮は今も昔も変わらず、何だか微笑ましい。
このころは「花」といえば「梅」をさし、花見の宴も盛んで、歌も多く詠まれた。万葉集4,500首余りのうち、萩を詠んだものが141首で1位。「梅」は2位で119首とも129首とも。ちなみに桜は4位42首。当時は桜よりも好まれていたようだ。
厳寒に耐え、春、百花に先駆けて花を咲かせ、芳香を放つ白梅などは、まさに「百花の長」にふさわしい品格。別名は「匂草(ニオイグサ)」「春告草(ハルツゲグサ)」とも呼ばれ「花」と「枝振り」を楽しむ花木。和歌山、南部梅林の白梅は「一目百万 香り十里」、その美しさは白い絨毯を敷き詰めたようだと言われる。
古代は一重咲きの白梅や野梅(ヤバイ/野生の梅)が主流だったが、今は多種多様。白梅・紅梅・一重咲き・八重咲き・しだれ梅など。
菅原道真公を慕って、一晩で京都から左遷された大宰府に飛んだと言われる「菅公の飛梅」は野梅性の白梅。太宰府天満宮の本殿に向かって右前に新年一番に花をつける。
観賞用・食用として用いられ、新年の松竹梅などはその筆頭。
「実」は、「梅はその日の難逃れ」と言われ、朝の食卓にのぼる。殺菌作用があるため食あたりを防ぐ。そういえば、お弁当に梅干しはつき物、梅肉エキス(下痢止め)のお世話になったこともあったっけ…などなど。
また「実」を燻した烏梅(ウバイ)は、奈良月ヶ瀬の名産で、下痢止め、熱さまし、咳止めに効く。
「梅酒」「梅茶」「梅酢」など、見渡してみると、昔ながら身近にあった植物なのである。
※大阪城梅林
100品種以上、約1,270本。開花1月中旬~3月下旬。見頃は2月中旬~3月上旬」
※大阪市歌
大正10年4月制定、全国から公募。森鴎外・幸田露伴ら5氏が審査。
作詞:香川県三豊中学校の 堀沢周安氏入選。(賞金500円)
作曲:東京音楽学校助教授の 中田章氏。
※中国原産/バラ科サクラ属/同科・属に「サクラ」「モモ」



