「会報150号発刊の今を記録」

会報誌「大阪販売士」第150号(2025.1.1発刊)より転載
2025/4/5:Web掲載にあたり、現時点での統計データへ改変

株式会社カンノマネジメント 神野 俊和

 会報150号が発刊されました。100号発刊から20年、紙媒体としては最後の節目でしょう。

 20年前は通勤電車で新聞を読む人もいましたが、今やスマホに夢中。音楽を聴くのも、CD購入からダウンロードの時代を経て、今やストリーミング再生。もはやデータさえ手元にはありません。

 所有から利用に変わっただけでなく、廃棄まで考える時代になりました。所有した「モノ」は、いつかは廃棄をしなければなりません(デジタルデータの廃棄も喫緊の課題)。

 ネット通販が伸び、決済手段としてのクレジットカードは二桁成長を続け、2024年の決済額は116.9兆円。コード決済、電子マネーなどを含めたキャッシュレス決済比率は、民間最終消費支出の4割を超えた。

 子どもへの小遣いでさえも○○ペイで支払う時代。決済手段としての「カネ」、販売方法としての「ヒト」の介在は、コスト(手間)と天秤に掛けられ、急速にしぼんでいます。

 在宅勤務が増え、オンライン会議も普及。「5分前行動」は過去の話となり、定刻に合わせてオンタイム行動。もっとも本来の5分前行動とは5分前に行動を起こすのではなく、定刻の5分前までに準備をすませ、定刻と同時に行動を起こすことを指します。

 オンライン会議が始まっても回線がつながらず、あたふたしている人は現代の5分前行動ができていないことになります。

 働き方改革が浸透、労働時間は短くなり、年次有給休暇の取得率もアップ。一方で労働密度は高まり、スキマ(ゆとり・アソビ)はなくなった。

 以前なら、経理担当者は銀行へ行き、待ち時間がスキマでした。営業は早めに訪問先に出向き、近くの喫茶店でスキマを過ごしていました。

 労働密度の高まりは、会社業務との適性が合わない人の精神的疲労を蓄積させました。コンビニのごとくメンタルクリニックは増え、適応障害の診断書が即発行。

 少子高齢・人口減少社会となり、労働力不足に拍車。当面の対策は、女性・高齢者の活用と外国人労働者。2024年の労働力調査では、65~69歳の労働力率は男性64.8%、女性45.2%となっており、70歳まで働くことが普通になってきました。定年は職業生活の終点ではなく、一つの節目に変わりました。

 外国人労働者は安価な労働力ではありません。時給10ドルを支払えないようであれば外国人労働者の確保は難しくなります。

※労働力率=人口に占める就業者と完全失業者の合計数割合

 大企業でも通年採用が一般化。会社が求めるものは過去の実績・保有能力ではなく、現在の価値(見込める成果・発揮能力)。勤続は力なく、受動的に仕事をこなすだけでは早晩、最低賃金に埋没。この「全労働最低賃金」から逃れるためには自らの価値を高めるしかありません。

 自己表現できる場(チャンス)は広がっています。頭で考えるだけでなく、行動に移せることが肝要です。 

 会報200号の発刊は、おそらく25年後。21世紀も半ば、令和そして次の時代をどのように生きるか、どのような世界になっているのか、楽しみです。