2024年度 第1回販売士塾報告

開催日:2024年8月29日(木)

テーマ:「苦情という名の贈り物」

講 師:イーエムイーコンサルタンツ株式会社  代表取締役 小野 知己 氏

報告者:京 里美 

 今年度、販売士塾の第1弾は、中小企業診断士かつ1級販売士でもある、イーエムイーコンサルタンツ株式会社 代表取締役の小野 知己氏にご登壇いただきました。小野氏は数多くのセミナーで講師を務め、ご著書も多く出版されておられます。

 今回は、なじみのテーマではありますが、意外にその本質を理解できていない【苦情という名の贈り物】について、ご教授いただきました。

「苦情を言ってくださるお客様は、良くなって欲しいと思うから、言いにくいことを言ってくださる。つまりわが社のファンである」とはわかっていても、苦情を言われるのはやはりいい気はしない。苦情がないと「わが社は問題がない」と勘違いする。これが日常化するとどんな恐ろしい結果になるのか?

 言わずもがなの、トップがテレビで謝罪会見をしたり、信頼の失墜で顧客を失い、経営が大きく傾いたりと「あの会社が!」と驚くことも少なくない。今回のセミナーを拝聴し、改めて【顧客は苦情を言わない】存在であることを具体的なデータをもって示していただき、認識することができた。

 店や商品、サービスを選ぶのは消費者であることを店側は忘れている。不満があれば、客は黙ってその店に行かなくなる。「あれっ!最近なんかお客さん減った?」なんて気づいたときにはもう、ゆでがえる

 対応を誤ることの重要性を受講者の私達も客側になって考えさせられた。

【苦情がなぜ起こるのか? 】

 その根本原因を理解した上での対応が重要。私の会社もヒアリハット情報を共有することで重大な事故を防ぐ仕組みを運用している。しかし、単なる社内ルール化となっては意味がないのである。客に接する最前線の社員が、顧客の感じた不満の種を成長させないよう社内で共有し、再発防止策を皆で考える。このような取り組みを組織文化として定着させなければ、継続的に苦情を未然に防ぐ体質として定着しないことがよく理解できた。また、間違ってはいけないのは、『お客様は神様ではない。迎合するのではなく、満足を与える』ということ。現場では、お客の不満を抑えるのに迎合的な対応をとっているのをよく見る。

 印象に残った小野先生の言葉は、顧客が感じる効用と価値と価格のバランスが重要ということだ。価値が感じられれば顧客は高くても選択してくれる。そのためには社員が顧客の顔を思い浮かべて、顧客のニーズを想起できるかである。顧客関係の強化があって、商品開発強化ができる。顧客の関心がないものに、意識はいかないからである。 

 ここも大いに勉強になったことであるが、そのことを感じるためには、「変化差異を観察すること」である。変化とは時間軸の違い、差異とは空間軸の違いであると。

 とにもかくにも、苦情を贈り物に変えるのは、最前線の社員だけでなく、社内全体がお客様の方を向く、重要なのはそれが社内文化として定着させるということである。

まだあと2回、小野先生のシリーズ講義は続く。次回も楽しみに、また受講させていただき、販売士としての活動に大いに活かしていきたいと思う。

 最後に、大型台風接近の中、強行してくださった小野先生に、受講者全員で感謝の気持ちを込めて盛大な拍手を送り、1回目を終了した。