第8回「職場における熱中症対策の強化について」
文責 社会保険労務士・FP・1級販売士
高濱光暢
近年、夏季の気温上昇が著しく、熱中症予防の必要性が叫ばれるところ、職場における熱中症の重篤化を防止するため令和7年6月1日から労働安全衛生法規則が改正された。
職場における熱中症による死亡災害が2年連続で30人を超えるレベルとなり、熱中症は死亡災害にいたる割合が他の災害の約5~6倍、また死亡者の約7割は屋外作業であることが指摘されており、対策の強化が求められている。特に初期症状の放置・対応の遅れが元であることが多いことから、労働の現場において、死亡に至らせない(重篤化させない)ための適切な対策の実施が必要である。
今回の改正の基本的な考え方として、
見つける → 判断する → 対処する
現場における対応として、熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、以下の「体制整備」、「手順作成」、「関係者への周知」が事業者に義務付けられる。
⑴ 「熱中症の自覚症状がある作業者」や
「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」が
その旨を報告するための体制整備及び関係作業者への周知。
※報告を受けるだけでなく、職場巡視やバディ制の採用、ウェアラブルデバイス等の活用や双方向での定期連絡などにより、熱中症の症状がある作業者を積極的に把握するように努める。
⑵ 熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、
① 事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等
② 作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送等熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の実施手順の作成及び関係作業者への周知
※作業強度や着衣の状況等によっては、上記の作業に該当しない場合であっても熱中症のリスクが高まるため、上記に準じた対応が推奨される。
※同一の作業場において、労働者以外の熱中症のおそれのある作業に従事する者についても、上記対応を講じることとする。
対象となるのは、
「WBGT28度以上又は気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業
※WBGT基準値とは、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数のこと。
日本産業規格JIS Z 8504を参考に実際の作業現場で測定実測できない場合には、熱中症予防情報サイト等でWBGT基準を把握。
近年の夏の異常な暑さは、労働環境において大変なリスクとなります。夏本番を前に是非とも社内の体制を整備しましょう。
[参考]「職場における熱中症対策の強化について」パンフレット 厚生労働省