ハマナス(浜茄子)


会報誌「大阪販売士」第96号(2004.6.30発刊)より転載
2025/8/10:Web掲載にあたり一部改変

花ライフコーディネーター 宮川 直子

数年前、スイスアルプスの とある美しい村で「ハマナス」に出会った。少し小ぶりだったが濃いピンク色の花が数輪。まさかこんなところで… みんなも すぐに駆け寄ってきた。

懐かしい気がしたのも当然、日本原産の花である。

「ハマナシ(浜梨)」とも呼ばれる。英名は「ジャパニーズ・ローズ」。昔から日本の北の大地に自生しているバラなのである。可憐で美しい花は、残念なことにその命は短く、ほぼ一日。花言葉も「悲しくそして美しく」となっている。

“知床の岬に ハマナスの咲くころ…”

有名なこの歌は北国の歌「知床旅情」。ハマナスは昭和53年7月「北海道の花」に指定された。

6~8月頃、北海道や本州北部の海岸の砂地に 濃桃色で6~9㎝くらいの薄紙のような5枚の花びらをひらく。その後 お盆から秋ごろには、平たく丸く 紅くて艶のある「実」に姿をかえる。


男鹿半島には鬼が住んでいて、大和朝廷の坂上田村麻呂が討伐した。その時に流した鬼たちの血の涙で
ハマナスの花が赤く染まったという話がある。

その地方では 今でもハマナスの赤い実をお盆には仏壇にそなえるという。
鬼伝説はいろいろあるが、芥川龍之介の「桃太郎」にでてくる鬼を思いだした。勝手な想像だが、鬼のその涙は きっと悔し涙であったろう。
「実」をそなえるのは、人間から鬼へのお詫びのしるしかもしれない…と。

地元の子供たちは 遊びの合間につまんではおやつにする。
他のバラの実よりも比較的大きめで、ハマナス酒やジャムをつくるにも扱いやすいと聞く。
ビタミンCの含有量は素晴らしく、レモンの20倍。漢方でも用いられている。
花は香水用に、花びらや蕾は乾燥させて優雅な花茶に。ウーロン茶や紅茶とブレンドしてもよい。
又、伝統絹織物の「秋田八丈」(文化無形財)の「鳶色 トビイロ」は、その根皮や樹皮を染料としている。

大阪では ほとんど目にすることは無いが、日本海側の自生南限地帯(国の天然記念物)、鳥取県大山の北、中山町へ足を運ぶと出会える。

ハマナスの実の生食を試してみたい。

【追記】

※・「知床旅情」:作詞・作曲 森繁久彌

 ・芥川龍之介の「桃太郎」:お薦めします。​

 ・鳥取県大山の北、中山町は2005.3.28に廃止。鳥取県西伯郡大山町になる。