ハコベラ ( はこべ、繁縷 )

会報誌「大阪販売士」第124号(2013.1.1発刊)より転載
2026/5/06:Web掲載にあたり一部改変

花ライフコーディネーター 宮川 直子

「せり なずな ごぎょう はこべら 仏の座
 すずな すずしろ これぞ七草」(作者不詳)

 新たな一年がスタートする1月7日の朝、春の若菜「七草粥」をいただく。邪気を払い、一年の健康を願う古くからの風習である。この「はこべら」とは「ハコベ」のことで、春の七草のひとつ。

 幼い頃、ままごと遊びやひよこの餌として摘んだ記憶がある。草丈は10~20cmほどで、白い小さな花は直径5mmほど。子どもの目線からだと見つけやすいのかもしれない。花びらは5枚だが深く切れ込んでおり、10枚に見える。
これは観察のポイント!このことに気づいている人は意外と少ないように思う。

「ハコベ」とはナデシコ科ハコベ属の総称であるが、通常、単にハコベという場合はその一種「コハコベ」をさすことが多い。全体が小ぶりで茎が少し紫褐色を帯びている。

 ハコベは世界に約120種、日本には約18種あり、日本全土に分布する。田畑や野原、道端に普通に見られる一年草、あるいは越年草である。
別名の「アサシラゲ」は、朝日にあたるといっせいに花を開く「朝開け」から転訛したもの。海外では晴れた日の朝9時に開き、夜9時に閉じるといわれ、開花した朝はその4時間以内は雨が降らず、閉じたままだと雨などと、天気予報に使われてきたという。

 春から初夏にかけて盛んにはびこり、こぼれ種で増えるため、嫌われる場合もある。
真冬でも日だまりで花を咲かせる丈夫な草花だが、5・6月頃のものが癖もなくておいしいとのこと。
開花と発芽を繰り返すため、野生の青菜の中では最も柔らかく「ひよこ草」の別名もあり、小鳥の餌によい。ペットのインコ用にベランダ栽培をしている人もいるようで、他の青菜よりも好んで食べるとのこと。

 ちなみに英名は「Chickweed(チックウィード)」といい、「chick」はひよこ、「weed」は雑草の意である。
また、ハコベの漢字表記は「繁縷」、生薬名も同じく「繁縷(はんろう)」と書くが、読み方が異なる。「繁」は『茂る』の意で群生する様子を表し、「縷」は『糸すじ』のことで、茎を引きちぎると白い筋(維管束)が糸のように引くことに由来する。

 人間にも有用で、ハーブ事典には食用や薬用に使われ、ビタミンA・Cやミネラル(鉄、銅など)が豊富とある。おひたしやあえもの、汁の実にする。ヨーロッパではサラダやゆでて食べ、病後の回復期や栄養失調の子どもの体力回復に利用されたとのことである。
利尿作用や浄血作用もあり、はれもの、歯痛、歯槽膿漏や虫歯の予防にも使われる。

「はこべ塩歯磨」は、現在でも大阪市内で販売されており、チューブ入りではない微粉末の歯磨き粉は、どこか懐かしい気分にさせてくれる。

 七草粥用には、年末から新年にかけて七草の「寄せ植え」や、パック詰めされたカット野菜「七草セット」がデパートやスーパーに出回るが、小鳥といわず、私たち人間も「若菜つみ」をしてみるのも楽しい。

【追記】

♢「はこべ塩歯磨」について
・大阪にて文化年間(1804〜1818)に、ハコベと赤穂の塩で創製。
 現在は衛生面から、ハコベの代わりにペパーミント精油を使用とのこと。
・清潔なハコベが入手できれば塩を加え、自分用に手作りする方もおられるようです