2025年度 第1回販売士塾報告

会報誌「大阪販売士」第152号(2026.1.1発刊)より転載
2026/5/20:Web掲載にあたり一部改変

2025年度 第1回販売士塾報告
開催日:2025年10月16日(木)
テーマ:「顧客体験の最前線 ~ CX(Customer Experience)で差をつける ~」
講 師:セイワサプライ株式会社 永尾 聖司 氏
報告者: 教育事業委員 鴻本 久美 (K’s オフィス  オーブ)

 協会会員が講師となり3回シリーズで、テーマを深掘りする販売士塾。
今年度は「未来を創るリテールマーケティング」をテーマにお話を伺います。
商品・サービスが世の中にあふれる時代に選ばれる理由、そのキーワードは「体験」。お客様が「また来たい」
「また買いたい」と思う店舗創りとは? 
 3回の講義を通してリテールの未来を想像し、新たな可能性を広げる良い機会となりそうです。

 第1回では、①顧客体験(CX)の定義と重要性 ②店舗・ECでのCX向上事例 ③顧客の声を活かすデー
タ活用法について、なかでも定義と重要性を中心にお話を伺いました。
① 顧客体験(CX)の定義と重要性
定義:CXはカスタマーエクスペリエンス (Customer Experience)のことで、 顧客体験・顧客体験価値と訳される。商業の場で、顧客が単に商品やサービスの購入にとどまらず、企業と接するすべての瞬間を通じて得る、印象、および満足を示す概念。「利便性」や「機能性」はもちろんのこと、「嬉しい」「楽しい」「安心できる」「特別扱いされている」といった、顧客が持つ感情的な価値を重要視する考え方。

CXが重要視される主な理由:
1.顧客の要求事項が高度かつ分散化している
→ 品質、デザイン性、機能性、安価、これら分散化した顧客の要求に対し、まとめて対応しなければならない。
2.オフラインからオンラインまで包括した市場ケアの必要性
→例えば「店舗での食事」「テイクアウト (中食)」「宅配(デリバリー)」など、モノは同じでも、ライフスタイルに合わせて顧客が異なる手段で購買・調達するシーンを想定し、対応しなければならない。
3.世代間のデジタルギャップ
→「デジタルネガティブ(新聞、TV、電話が必要など)世代」と「デジタルネイティブ(全てのプロセスをネットで完結)世代」のどちらの要望にも応えることの出来る商品・サービスを提供しなければならない。

② 店舗・ECでのCX向上事例
 パーソナライズ、オムニチャネル戦略などで躍進する3社の海外企業を紹介。
・Amazon(アマゾン、USA):「ワンクリック注文」「商品レビューの充実」などを通じて、「すぐ買える」「すぐ届く」「安心して選べる」ことにより、また使いたくなる!を実現。
・SEPHORA (セフォラ、フランス):AIを使った化粧品の推奨や、顧客自身の探す時間や手間の省力化で「自分に合ったものがすぐ見つかる」 ことにより、楽しく買える!を実現。
・IKEA(イケア、スウェーデン):家具を実際に部屋に置いたように見せる、AR機能の導入や、アプリでの店内案内で、「買う前に試せる」「迷わずに選べる」ことにより、安心して買える!を実現。

③ 顧客の声を活かすデータ活用法
・VOC (Voice of Customer)分析
 顧客から寄せられる声を企業活動に活かす手法。
分析結果の利用により、顧客満足度の向上、具体的な改善内容の明確化、収益増加が見込める。主なデータ収集の方法は、「アンケート」「SNS」「メール・問い合わせフォーム」「電話/コールセンター」など。
・NPS (Net Promoter Score)
顧客の愛着度を示す「顧客ロイヤルティ」を図る指標。NPS の 利用により、「収益拡大の判断材料として活用できる」「自社製品・ブランドの顧客に合ったアプローチを検討できる」「業界内での自社の立ち位置が把握できる」などのメリットが得られる。

最後に、顧客とは?
「顧 ( こ )」:かえりみる、振り向いてみる、また、思いをめぐらす、心にかける。すなわち、「常に気に掛けて、思いやる存在」こそが顧客なのです。とまとめてくださいました。
 永尾氏の勤務先は、化粧品の原材料などを扱うBtoB の化成品メーカーです。自社の製品が具体的な商品のかたちとなったものを知らない、という社員が多かったなか、目に触れやすい場所、食堂に商品を置いてみたそうです。その結果、社員のモチベーションや働く満足度を上げることに成功し、収益の向上が図られたとのこと。営業活動に加えて、ちょっとした仕掛けを利用するアイデアで、社内でもご活躍のご様子です。

 永尾氏は教育事業委員でもあり、委員会の中でも大変ご尽力をいただき、とても頼れる販売士さんです。

次回以降の講座も楽しみです。