まほうびん記念館(象印マホービン株式会社)

第138号掲載(2019.1.1)

興津 厚志

 まほうびんは、「真空の力」を利用して保温・保冷を行います。日本では、1908(明治41)年に発売を開始したといわれ、当時のまほうびんは、ガラスでつくられた中瓶で真空をつくっていました。

 大阪天満宮の正面西側の“えびす門”の外に「大阪 ガラス発祥の地」と刻まれた石碑が建っていることからもわかるように、大阪・天満は、江戸時代よりガラス工業の盛んな都市であり、中瓶を作る優秀なガラス職人が集まる大阪は、日本のまほうびん工業の中心地でした。そのような中、象印マホービン株式会社の前身・市川兄弟商会は、100年前の1918(大正7)年に設立されました。

 まほうびんは、日本に輸入された当時の広告では、「狩猟の供」として紹介されているように、持ち歩くことが多い製品でした。その後、卓上用ポットが普及していき、昭和40年代には、花柄で装われたまほうびんが流行します。また、お湯を出す構造も傾けてお湯を注ぐから、流行語にもなった『押すだけ』のとおり、押してお湯を注ぐ構造がでてきます。ガラスだったために割れやすかったまほうびんも1980年代になりステンレス製のまほうびんの登場で、誰もが「マイボトル」を持ち歩くようになりました。まほうびんは日本人のライフスタイルの変化に伴走して素材や形態、機能を進化させてきました。

「まほうびん記念館」は、単に商品の羅列だけではなく、その時代時代にどのように企業が対応してきたのか、どのような商品が生活に受け入れられてきたのかを展示を通じて知ることができます。事前予約が必要ですが、ぜひ、一度、立ち寄ってみたい企業ミュージアムの一つです。