竹中大工道具館(株式会社竹中工務店)

第133号掲載(2017.1.1)

興津 厚志

 竹中大工道具館は、日本で唯一の大工道具の博物館として1984年に神戸市中山手に開館しました。その後、展示・収蔵スペースの不足等を解消するため、2014年10月に、新神戸駅前の緑豊かな地に移転。日々多くの来館者で賑わっています。

  建物は地上1階、地下2階。四周の壁は京都の聚楽土を混ぜた漆喰仕上げ、また内側は桂離宮でも用いられているパラリ仕上げ。雨風を防ぐ屋根は淡路のいぶし瓦。博物館そのものが「匠の技の数々を肌で感じていただける場」となっています。

 展示室ではこれまで収集した約33,000点の中から選りすぐった約1,000点の大工道具のほか、吹き抜け空間に7メートルを超える高さでそびえ立つ原寸大の唐招提寺金堂の柱と組物、数寄屋の繊細な仕事が見えるスケルトン茶室など、現代の匠たちの手によって最高の職人技を詰め込んだ特別な模型を展示しています。

  7つのコーナーに分かれた展示は、大工道具の歴史や種類、しくみを紹介する「歴史の旅へ」「道具と手仕事」「世界を巡る」、道具や手仕事の美を感じていただく「名工の輝き」「和の伝統美」。ものづくりの心を棟梁の仕事を通して伝える「棟梁に学ぶ」。木を十分にいかす知恵の数々を見ていただく「木を生かす」。館内では、映像、音声ガイドシステム、木の香りを嗅ぐ、実際に触れることのできるハンズオン展示など「五感に響く」展示が充実しています。

 また、「宮大工がいる博物館」というユニークな特色を活かして、木工室では、子供も参加できる「ちょこっと木工」やプロの大工さんと一緒にカンナを使って木を削ったり、木の香りを体験する「大工による鉋削り体験」など、プロの技を間近に体感できるプログラムも用意されており、家族で楽しめるミュージアムとなっています。